「クラフトビールで人と自然をつなげる」徳島発の挑戦

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山々が連なり清流が流れる、四国のうっそうとした自然が広がる徳島県美馬市。ここに昨年オープンした「パドルブリュー」は、地元の豊かな自然をモチーフにしたクラフトビールを作る醸造所です。その創設者であり主任醸造家でもある新居拓也さんは、地元の自然と人々の間に新たなつながりを生み出したいという想いから、美しい自然を表現するクラフトビールの醸造に挑んでいます。

〈徳島の自然をすべて詰め込んで〉

剣山から湧き出る清流、穴吹川の水で作るビールは、水そのものの美味しさを感じさせ、川の大切さや環境を大切にする意味を伝える一方で、地元徳島の自然を彩る多くの要素を詰め込んでいます。「山、森、川、気候など、徳島の自然をすべて詰め込んだビールを作るのが一つのテーマです」と新居さんは話します。

青々とした森から奔流する清流、四季折々の風情を持つ地元の自然を反映した彼のビール作りは、カヌーをこぐ動作そのままにビールの原料となる麦芽を手作業でかき混ぜるという独特なスタイルでもあります。「カヌーをこぐときと全く一緒の動きで、前に進んでいくという前向きな思いを込めています」と語る新居さんの姿勢には、自然と人間の共生を願う強い意志が感じられます。

〈地元の自然と水への意識を育む活動〉

そんな新居さんの挑戦は、ビールの醸造だけにとどまりません。手入れが行き届かず、杉の木が増えすぎて生育状況が良くない森の状況を、ビールを通じて伝える試みにも挑戦しています。「ビールの味だけでなく、その背後にあるメッセージを伝えられるかもしれない」と考え、間伐した杉の木をチップにして、醸造中のビールに加えたのです。

また、地元の子どもたちにも穴吹川の水の大切さを伝える活動を続けており、その一環で穴吹川の水を使ったゆずサイダー作りを子どもたちと共に行っています。新居さんは、「きょうのことを覚えててくれたら、大人になってからもっと大きな気づきがあるんじゃないかと思っています。世代によっていろんなアプローチがあるんじゃないかなって」と、地元の自然と水への意識を育む活動の大切さを語ります。

新居さんが作るビールは、「人と自然」をつなげる存在としてだけでなく、徳島の豊かな自然や地域の環境問題について学んだり考えるきっかけを提供する役割も果たしています。自然と共にある生活と醸造の知識を活かし、ビールに人々の生活や環境への関心を引き寄せる彼の挑戦は、これからもまだまだ続きます。

参照記事・引用元画像
徳島発!清流の水を使った「人と自然をつなぐ」クラフトビール | NHK
【NHK】徳島県美馬市に徳島の豊かな自然をモチーフにしたクラフトビールを作る醸造所がオープン。ビールを通して人と自然を近づけようと奮闘する男性を取材しました。